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そろばん用語集:A.そろばんについての基本的な用語

珠算教育研究所 「新珠算用語集」〈初出:「珠算春秋 No.98」2014年6月刊〉を編集したものです。
なお,年代や解釈によって用語には差異があることをご了承ください。


珠算(しゅざん)

そろばんを使って行う計算のこと。
珠算の語は,2世紀ごろの数術記遺すうじゅつきいに積算(算木さんぎ による計算)などいろいろな計算器具を記述した中にこの語が記されている。しかし,この珠算に用いたそろばんがどのような形をしていたかについては,いろいろな説がある。
その後,珠算という言葉は長期間,文献に出てこないが,中国では清代の数度衍すうどえん (1661)に「巻之一 珠算」,「巻之二 筆算」として珠算の解説が記載されている。
日本では明治時代以降,筆算に対し,そろばんで行う計算を珠算と称して,珠算の語が広く使われるようになった。
珠算のことを「たま算」とも称した。

1.そろばん・算盤(そろばん)

「たま」を使って数を表し,計算する器具のこと。
中国では算盤と書く。宋代末の輟耕録てっこうろく (1366)に「算盤珠」とあるのが最も古い記録である。日本では「算盤」,「十露盤」,「算顆盤」などいろいろな字が当てられている。
そろばんは室町時代に中国から日本へ伝えられたといわれており,中国語の「算盤(Swan Pan)」が転化して「そろばん」と呼ばれるようになったと一般にいわれている。宋代に「走盤集」,「盤珠算」という算書があり(現在,伝を失している),日本の五山文学(鎌倉・室町時代)には「走盤珠」,「珠走盤」などの語が記載されているので,走盤(Zou Pan)がSorobanに転化したという説もある。
五珠1個,一珠4個のそろばんを「四つ珠算盤」,五珠1個,一珠5個のそろばんを「五つ珠算盤」と呼んでいる。これは昭和10年から逐年「小学算術」の改定が行われ,昭和13年から小学4年で算数の中へ珠算が課せられるようになり,このとき一珠4個のそろばんが採用されて,これを標準そろばんに定めた。このそろばんが広く用いられるようになり,従来のそろばんと区別するため「四つ珠」「五つ珠」の呼び方が生まれた。
そろばんは1丁,2丁と数える(注:「ちょう 」は真っ直ぐな物を数える語で,新表記では「丁」を用いる)。
そろばんの語はまた,「そろばんを習う」,「そろばんが上手だ」などと,日常生活では珠算と同義語にも使われている。これは「珠算」の語が使われなかった江戸時代からの名残である。

2.珠・たま・玉(たま)

そろばんの軸に通してある「たま」を珠(たま)という。
中国では宋代末の輟耕録(1366)に「算盤珠」とある。常用漢字では「珠」を「たま」と読まないから一般には仮名で「たま」と書く。そろばんでは珠で数を表し,はりの下の珠は1つが1を表すから「一珠」といい,はりの上の珠は1つが5を表すから「五珠」という。
算数科の教科書では「珠」の代わりに「玉」と書く。また古くは「顆(か・つぶ)」とも称し,珠2つは2顆といった。

3.一珠・一だま・一玉・1玉(いちだま)

分類Aの「珠」の項を参照。

4.五珠・五だま・五玉・5玉(ごだま)

分類Aの「珠」の項を参照。

5.はり・梁(はり)

そろばんで五珠と一珠を分けている横木(さん )をいう。
中国では明代(1368~1615)末にも梁と称したが,算法統宗(1593)には「脊:盤中横梁隔木」とあり,日本の古い本にはせき ・横梁と書いてある。「脊」を間違って「背」と書いてあるものもある。
昔は,梁の上方を天,下方を地といった。帰除歌きじょか (割算九九)の「二一天作五」の天はこれを指す。

6.定位点(ていいてん)

そろばんに数を置くとき,数を置きやすいように目印として梁の上に記した点をいう。
そろばんには,定位点が日本の命数法に基づいて4桁ごとにつけてあるものと,帳簿に記入された数が3桁ごとにコンマをつけてあることから,これに倣って3桁ごとにつけてあるものがある。現在は後者のものを使用している。
また昔は,はり上にこく しょう ごう とか,百・十・かん ・百・十・もんめ などの文字が記入されていたが,はり上に文字が記入されているとその名数以外の計算に不便なために,明治以後この文字に代わって定位点をつけたそろばんが次第に普及していった。このため,「・」が桁の位置につけられている。

7.けた・桁(けた)

珠を通した軸をいう。
また,数の大きさ(位や単位)を表すことにも使う。465は3桁の数という。したがって,そろばんの大きさを表すにも「23桁のそろばん」などという。

8.わく・枠(わく)

そろばんの梁・桁を固定した周りの囲をいう。

9.天(てん)

そろばんの梁から上のことをいう。

10.地(ち)

そろばんの梁から下のことをいう。

11.上(かみ)

そろばんの左の方をいう。

12.下(しも)

そろばんの右の方をいう。

13.四つ珠算盤

分類Aの「そろばん」の項を参照。

14.五つ珠算盤

分類Aの「そろばん」の項を参照。