そろばん用語集:B.そろばんに置く数についての用語
珠算教育研究所 「新珠算用語集」〈初出:「珠算春秋 No.98」2014年6月刊〉を編集したものです。
なお,年代や解釈によって用語には差異があることをご了承ください。
1.整数(せいすう)
個数を表すのに使われる数1,2,3,4,……を自然数といい,これに0を加えた0,1,2,3,4,……と-1,-2,-3,-4,……を整数という。つまり,正の整数と負の整数,0を総称して整数という。
2.小数(しょうすう)
0.23のように1に満たないはしたの部分を十進数によって表した数を小数という。広い意味で,5.3のように整数と小数の和でできている数も小数という。
3.帯小数(たいしょうすう)
5.3のように1より大きい小数を帯小数と区別することもある。
4.純小数(じゅんしょうすう)
0.3のように1より小さい小数を純小数と区別することもある。
5.分数(ぶんすう)
AをBで割ったときの商を$${\frac A B}$$と表したものを分数という。このとき,Aを分子,Bを分母という。(AとBの値には0を除く。)
6.分母(ぶんぼ)
分類Bの「分数」の項を参照。
7.分子(ぶんし)
分類Bの「分数」の項を参照。
8.真分数(しんぶんすう)
分子<分母である分数をいう。
9.仮分数(かぶんすう)
分子≧分母である分数をいう。
10.帯分数(たいぶんすう)
0を含まない整数と真分数の和になっている分数をいう。
11.通分(つうぶん)
分母の異なる2つ以上の分数を,分母が同じ数の分数に直すこと。
12.約分(やくぶん)
分子と分母を同じ数(0を除く)で割り,分母を小さい分数に直すこと。
13.無名数(むめいすう)
200,3.5などのように単位名のついていない数をいう。
14.名数(めいすう)
200円,3m50cmなどのように単位名のついている数をいう。
15.単名数(たんめいすう)
3.5m,90分,1.5時間などのように,1つの単位で表した名数をいう。
16.複名数(ふくめいすう)・諸等数(しょとうすう)
3m50cm,1時間30分6秒などのように,2つ以上の単位を組み合わせて表した名数をいう。
17.補数(ほすう)
a=b+cであるとき,bはaに関してcの補数,cはaに関してbの補数という。(例:5に関して,3の補数は2,1の補数は4,10に関して3の補数は7,1の補数は9である)
18.正の数(せいのすう)
0より大きい数をいう。(補足:0は正の数でも負の数でもない)
19.負の数(ふのすう)
0より小さい数をいう。 (補足:0は正の数でも負の数でもない)
20.端数(はすう)・はしたの数(はしたのかず)
ある位や単位より小さい数をいう。(例:76,850円の1,000円未満というときは,850円が端数である)
21.端数処理(はすうしょり)・まるめる
端数を切り捨て,切り上げ,四捨五入などすること。「まるめる」という言葉を使うこともある。
22.切り捨て(きりすて)
ある位に足りないはしたの数は0とみなすこと,つまり,端数を省いた数にすること。 (例:3,398は100未満の数を切り捨てると3,300となる)
23.切り上げ(きりあげ)
ある位に足りないはしたの数はその位の数1つ分とみなすこと,つまり,端数をまとめて求める位の数を1増やすこと。(例:6,802は100位未満の数を切り上げると6,900となる)
24.四捨五入(ししゃごにゅう)
端数の首位が5以上であれば切り上げ,4以下であれば切り捨てることをいう。(例:1,748は100未満の数を四捨五入すると1,700,1,756は100未満の数を四捨五入すると1,800となる)
25.以上(いじょう)
100以上の数というときは,100を含めてそれより大きい数をいう。また,aが100以上の数であることを不等号で表すと a≧100 となる。
26.以下(いか)
100以下の数というときは,100を含めてそれより小さい数をいう。また,aが100以下の数であることを不等号で表すと a≦100 となる。
27.未満(みまん)
100未満というときは,100より小さい数をいう。またaが100未満の数であることを不等号で表すと a<100 となる。
28.概数(がいすう)
およその数のこと。
概数を求める指示には,千の位で四捨五入,四捨五入して一万の位まで,一万に足りないはした(一万の位未満)の数を四捨五入,四捨五入して上から2桁のおよその数,などがある。
29.布数(ふすう)
盤面(そろばん)に数を置くこと。分類Cの「おく」の項を参照。
30.御破算(ごはさん・ごわさん)
盤面を0の状態にすること。また,分類Cの「はらう」の項を参照。
また,読上(暗)算が終わって,つぎの読上(暗)算に移るとき,「御破算」と言って読上(暗)算を始める。この場合,「御破算で願いましては」と続けて言うことがある。また読む人が途中で読み間違えたときも「御破算」と言って,最初から読み直す。
「破算」の語は改算記(1659)の開立の説明に「目安ハ皆破算ス」とあるのが初見。
31.盤面(ばんめん)
そろばんの面のことを略して盤面という。
32.盤面数(ばんめんすう)
盤面に置かれている数のこと。
33.表面数(ひょうめんすう)
盤面数のこと。ただ,表面数は裏面数に対応する語として用いる。
34.裏面数(りめんすう)
10n乗に対して,表面数の補数をいう。つまり,表面数357の裏面数は643である。そろばんでは盤面に数を置くと,その補数(実際には1少ない数)が同時に盤面に表れるので,表面数・裏面数という語が生まれた。
35.首位(しゅい)
表された数の最上位をいう。
36.末位(まつい)
表された数の最下位をいう。首の反対語は尾であるので,昔は尾位とも称した。尾乗法の尾はこれを指す。
37.空位(くうい)
ある位に数がないとき,空位といってそれを表すために0と書く。例えば,そろばんで定位点のついている桁に1を置いた場合,これは1や1,000,そのほか1,000,000などと読むことができる。したがって,表されている数に関係ない桁と,0を表す桁との区別がつかないため,数字の0に相当する桁を空位と呼んで他の桁と区別をする。2,030の百の位と一の位は空位という。算法新書(1830)には「零:空位なり」とある。
また,203のように0(空位)が中間にある数は,乗除の計算に誤算を生じやすく,指導において注意を払わなければならないので,このような数を「とび桁のある数」ということがある。
38.空けた・空桁(からけた)
定位法の説明に際し,0.004のような純小数の小数点以下の有効数字の首位までの0(この場合,小数第一位と小数第二位の0)を「空桁」と呼ぶ。